日本野球の市場開発
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以下のコラムは、鷲野やさんが執筆されたものを、転載の許可を得て掲載したものです。
なお、このコラムに関する意見、感想は、G-Board+などでお願い致します。
1.日本野球の新傾向
1990年代になると、中日・ロッテ(オリックスのときもある)連合軍の韓国遠征、西武の台湾遠征・昨年のオリックスの台湾大地震復興チャリテイゲームなど、日本野球の海外進出が進んでいる。
又、1995年オフに福岡ドームで、日本(代表は福岡ダイエーだった)・韓国・台湾のチームとオーストラリアナショナルチームの4チームでのトーナメント戦が行われた。
これらの動きの背景には、野球の国際化・新たなるファン層の獲得があげられる。
2.「讀賣・巨人人気」とは何か。
日本で最も人気のある野球チームは讀賣ジャイアンツである。讀賣新聞社が年一回行う「スポーツに関する世論調査」でもその結果がでるし、各種リサーチ会社が行う調査も結果はしかりである。
このことにより「日本で巨人が最も人気があり、素晴らしいチームであるからファンが多い」ととる読売関係者・巨人ファンが存在する。その点はどうなのだろうか。
日刊スポーツが三日前(7月26日)の一面で、オリックスの台湾公式戦開催の記事を一面トップで載せたが、それによると台湾での日本プロ野球人気は西武・オリックスが中心であるという。その原因としては、石井・渡辺などの台湾球界の日本人投手がパリーグ出身であったこと、郭泰源氏の西武在籍の影響、台湾で日本野球にアクセスする中心手段であるNHK‐BS放送のプロ野球中継が、巨人戦中心(放映権の問題?)ではなく、比較的パリーグの試合をとりあげること、などが考えられる。
従って、この例から考えると讀賣・巨人人気は、ある割合の多寡はあろうと、「讀賣新聞社―日本テレビ」の鉄壁のコンビに助けられているところも
大きいと考えることが出来る。
3.「讀賣巨人軍」創設の理念
この点については、あんち巨人の私が、巨人ファンの方に述べる事ではないと思われる。何故ならファンにとって、球団史は尊重されるべきものであり、知っていればよりチームへの愛着がわくものだからである。
ただひとつだけ述べると、讀賣巨人軍は「アメリカ野球に劣らない日本野球創設」のため、作られた、ともいえよう。
讀賣巨人軍が創設された昭和初期の日本は、東京六大学などの学生野球の全盛期である。それに対抗するために必要なものはどんどん讀賣巨人を率先として取り入れてきた。
例えば、地方遠征がそうである。通常シーズン・オープン戦問わず、日本各地を転戦した。その中には現在でもプロ野球と縁の薄い地域にも精力的に遠征した。今では信じられない話かもしれないが、讀賣巨人は昭和14年・昭和15年には、当時日本の植民地であった満州国へも1ヶ月間遠征している。このイベントも満州国の野球隆盛に一役かっている。
(ちなみに都市対抗野球の初代優勝チームは南満州鉄道(株)の野球部である。この遠征については青田昇氏などが著書に記している)
そのような伝統もあるが、日本プロ野球界の人気が安泰になると徐々にそのような視点がなくなっていった。特に東京ドーム完成後の巨人はひどい。
名物であった東北・北陸シリーズの廃止などを行い、今残っているのは、報知新聞が3年前から発行されまだ基盤が弱い九州シリーズ(これも昔は川上氏誕生地の熊本・小倉・平和台の三戦制だった)と札幌シリーズを残すのみである。
来年の札幌ドームの完成に伴い、ますます「地方遠征」ぽくないものになるだろう。
4.現在巨人の「聖地御開帳政策」
私は、現在の讀賣巨人の試合開催を「聖地御開帳政策」と名づけた。東京ドームというキャパのよい、しかも環境的にもよい空間から足を出そうとしない態度、入場券販売制度の問題などからこう名づけた。
確かに今の方法をとれば東京ドームは連日満員。商売繁盛であろう。しかし「新たなファン層の開発」という意味では効果があるのだろうか。
「北國新聞」の調査などによると、巨人の北陸シリーズ撤退後、それに変わる中日の北陸シリーズ開始後、巨人ファンは相対的に減少し、中日ファンが増加し、阪神ファンが増加した、という結果がある。日本テレビはさかんに金沢の松井をとなえるが、地元では地元の有名プロ野球選手は小松投手なのである。
また、一度でもその土地に姿を見せてくれるチームを応援する、という傾向も広がりつつあるようだ。静岡に横浜ベイスターズのファン雑誌があったり、するのもその一例であろう。
そう考えると、現在の巨人人気も「絶対」ではない。現在は多様化の時代、巨人人気を支えるものとしての「メデイアの存在」の比重はより高くなるのだろうか。
5.オールスターに関する渡辺発言と地方への展開を
最初に日本プロ野球の国外政策を述べたが、国内政策を述べたい。
サーパス神戸が、松山・高松に移転しようとした話は有名である。また本拠地のあまりの不入りに悩む広島は、12球団で最も積極的といってよいほどの地方展開をおこなっている。北陸遠征・東北遠征・岐阜遠征(長良川で中日相手に主催ゲームを行う)今年からの松山遠征などである。
このように地方球場の設備改善・バブル時期に計画された公共事業としてのスタジアム開発が実現しつつある今日地方遠征の重要性・もっといえば「他の場所での試合開催(外国も含む)は見なおされても良い時期にきている。
その時期の渡辺発言である。
「現在はテレビがあるからオールスターは全部ドームで。テレビをみればよい」という趣旨のものだ。これにはあいたくちがふさがらなかった。金と、東京しか見ていない視点である。「本物のプロ野球」が来る事を待ち望んでいる人がどれだけ多いのか、知っての発言だろうか。(現に地方球場でのプロ野球開催はその土地では地方新聞の格好の話題となる)
他球団は魅力的なソフトを考えている。日ハムの上田凱旋試合としての松本遠征・西武のオリンピック関係の長野遠征。瀬戸内市場の強化としての広島の松山遠征、あとは東出凱旋試合としての福井遠征。などである。
現在の「巨人」は、マスコミにより過度に巨大に描かれている。その部分をとって考えると、巨人人気など露のようなものかもしれない。現に台湾に行くと、「巨人」という名はメジャーではないのだ。
創世期の精神に今こそたちかえる必要があるのではないだろうか。
今回の台湾展開も、満州展開の経験をもつ巨人がもっと積極的に知恵を化かし、球界の国際化に展開するべきではないのか。「球界の盟主」をなのるなら。
現在の球界の盟主は、他球団の戦力を殺ぎ落とし、有力新人を根こそぎにすることで、「盟主ずら」している。従って、巨人離れの行動も起こりつつある。本当に日本プロ野球界のためになること、を実現させて欲しい。
■筆者紹介
・197?生まれ。福岡県久留米市生まれ。その後父の転勤のため姫路→浜松と転勤。大学は関西に進学する。その後今年より福岡市に住む。
・専攻しているチームは広島東洋カープ。サッカーでは名古屋グランパス。
・Gに対して厳しい姿勢をとる地域に住んでいたため、いつのまにかアンチGになっている。
・愛読する新聞は朝日新聞だが、讀賣新聞の「20世紀シリーズ」は、Gと関係なく高く評価している。
・現在は、○○大学で、学生を相手にしている歴史学担当。
・特に近代社会を見る点で、国民娯楽としてのプロ野球には興味がある。